「現職の介護士に聞いてみた」シリーズ!
今回は、有料老人ホームで働く仮称Bさんに、話を伺い、介護の仕事の実態に迫りたいと思います。
以下は、実際に介護の現場で働くBさんのお話です。
経歴と勤務先について
私は介護業界は未経験で、養成学校で介護福祉士の資格を取得後に有料老人ホームで働き始めました。
勤務3年ほどで、現在ではリーダー業務を任せてもらうようになりました。
勤務先の有料老人ホームは利用者定員50名程度に対し、職員は20人程度です(内正社員5名、パート15名)。この20人にはナースや調理の人は入っておらず、介護職員の人数です。
勤務はシフト制で早出(7時~16時、休憩1時間)、遅出(10時~19時、休憩1時間)、日勤(9時~18時、休憩1時間)、夜勤(16時~10時、休憩1時間)があります。正社員として勤務していると、夜勤は週に1~2回は必ずありました。
有料老人ホームの1日の仕事内容
【5時~7時】起床介助と食堂への誘導
夜勤者
更衣介助、排泄介助などの起床介助を行う。準備完了後に朝食のため居室から食堂へ誘導。夜勤リーダー
上記後、食堂にて見守りを行う。起床時のモーニングケアを行います。
元々の生活歴を考慮して起こす時間を調整しながら、起床された方から更衣や排泄介助を行います。
寝起きで足取りがおぼつかず、普段はしっかり歩いている方でも転倒するリスクの高い時間帯です。
少ない人数で誘導を行う必要があり、必然的に見守りの目も少なくなるので注意が必要です。
【7時~9時】朝食介助
夜勤者
朝食を配膳し、食事介助を実施。早出職員
上記に加え、朝食の食事量などを記録する。夜勤リーダー
申し送り内容の確認。食堂に集まって食べていただきますが、落としたお箸などを拾おうとする方や急いで食べてむせる方など、事故のリスクは高いので見守りには気を使う必要があります。
高齢で食事量も少なく、すぐに食べ終わる方もいらっしゃれば、食事動作自体がゆっくりで長く時間がかかる方もいるので、食べ終わってトイレに行く方の介助なども突発的に発生します。
基本的には全体の見守りや食事量の確認を食堂担当のリーダーが行います。
食事介助も時間内に終える必要があり、カロリー計算された食事なので、原則的には介助の方には全量食べていただくように介助する必要があります。
ゆっくりすぎると食事自体に疲れてしまう方も多いので、むせないよう、遅すぎないように注意しなければいけません。
朝食時はナース等の介護職員以外の職員がいないのでより注意が必要です。
夜勤者は帰る直前であることもあり気が抜けやすい時間ですが、介護施設での事故は入浴と食事、服薬で頻発するので、少ない人員での食事の時間帯は気を張り続ける必要があります。
【9:00~12:00】洗濯、清掃、排せつ、入浴、移動介助など
夜勤リーダー
夜勤帯での様子を申し送りで報告する。その後残っている業務等を行う。10時退社。フロア担当者
担当フロアの入居者を食堂から居室へ誘導を行う。その後居室の清掃、洗濯、配茶(自立利用者にはお茶を配り、要介助の利用者には水分摂取の介助を行う)、排泄介助を行う。午前中の様子を記録した後、昼食のために居室から食堂へ誘導を行う。入浴担当者
入浴日は週2日。各フロアから順番に利用者を誘導してもらい、入浴介助を行う。入浴介助は脱衣、洗身、洗髪、湯船誘導、脱衣所誘導、更衣。全利用者50名程度の内、40名程度を午前中で入浴していただく。食堂担当者
全体の業務の調整を行う。遅れているフロア等の補助と、食堂の清掃、食堂で過ごされる利用者の見守りを行う。ちなみに、食堂担当者と夜勤リーダーの業務をリーダー業務と呼んでおり、一定の経験年数の正社員が受け持つことになっているので、パート社員や新入社員は担当しません。
朝の申し送り後、食事を済まされた利用者を食堂から居室へ誘導します。
食堂で座っている時間が長くなってくると、横になりたい、トイレに行きたいという利用者が多く、朝食後、食堂から居室への誘導は急ぐ必要があります。
また、この9時~12時の時間帯は、入浴の順番が回ってきた方を浴場へ誘導したり、ナースが出勤して体調が悪い方の対応を手伝ったりと、一番忙しい時間帯です。リーダー職は、遅れているフロアの手伝いに回ります。
一番体力的にキツイのは入浴担当者で、暑い浴場で入浴介助に付ききりになります。女性の職員が脱水や貧血で倒れることもあるくらい、体力仕事です。
【12:00~13:00】昼食介助
全職員
昼食の配膳を行う。食事介助を行う職員、下膳、食事量の記録を行う職員が残り、他職員は休憩。
昼食の時間は食事介助と全体の見守りです。
主な注意点は朝食と同じです。
【13:00~15:00】口腔ケア、移動、入浴など
フロア担当者
居室誘導後、排泄介助を実施。一部職員は休憩する。入浴担当者
居室誘導を補助し、全員が居室に戻られた後は残りの方の入浴介助。食堂担当者
居室誘導を補助し、全員が居室に戻られた後はおやつとレクリエーションの準備を行う。終了後、休憩職員の補助。昼食を終えた方から口腔ケアを実施し、その後居室へ誘導します。
食堂ではレクリエーション等の準備で十分な見守りが行えないので、居室で過ごしてもらいますが、昼間の中では一番事故の多い時間帯でもあります。
食後で疲れている方も多いので、歩行中の転倒に注意しなければなりません。
リーダーは毎日レクリエーションを企画して実施しなければならず、司会進行などが苦手な人はそれを理由にリーダー職に就きたくない人もいたほどでした。
カラオケなどの準備の簡単なものでも、マイクを回したり歌いたい人がいなければ、利用者の大半が分かるような演歌等をリーダー自ら歌うなどの必要もあり、苦手な人にとっては精神的にも負担の大きな業務です。
【15:00~17時】おやつ及び水分補給、排泄介助等
フロア担当者
おやつ、レクリエーションに参加されない方にはおやつを持っていく。必要ならば食事介助。その後一日の記録を作成。終わり次第食堂業務を補助する。早出職員は退社。入浴担当者
入浴介助終了後、食堂業務を補助する。食堂担当者
レクリエーションを実施。終了後はおやつを提供し、必要であれば食事介助を行う。排泄介助が必要な方には排泄介助を行い、オムツの利用者は居室へ誘導する。16時からは夜勤者も出勤しており、おやつの提供等を手伝います。
【17時~18時】食堂への誘導と夕食
フロア担当者
居室で過ごされていた利用者を食堂へ誘導し、夕食を配膳する。食事介助を実施し、18時で退社。入浴担当者
夕食を配膳する。食事介助を実施し、18時で退社。食堂担当者
夜勤者に対して日勤帯での様子を申し送り。その後配膳に合流し、服薬介助等を行う。適宜下膳。食事量を記録する。リーダーである食堂担当者が、日勤帯での様子や出来事を申し送りで夜勤者に伝えます。
日勤者全員からその日の様子などを聞き取らなければならず、時間を見つけては報告を受ける必要があります。
その後夕食の介助に入ります。主な注意点や業務のポイントは昼食時と同じです。
【18時~19時】口腔ケア、居室誘導
夜勤者
夕食を終えたからから口腔ケアを実施。居室へ誘導し、更衣介助。夜勤リーダー
下膳を行いつつ、口腔ケアを実施。食堂の利用者が全員居室へ戻られるまでは見守りを行う。食堂担当者
下膳を行いつつ、口腔ケアを実施。食堂の利用者が全員居室へ戻られるまでは見守りを行う。19時で退社。食事が終わって、居室で早く休みたいと訴えられる方も多く、忙しい時間帯です。
夕方から夜にかけては認知症高齢者が精神的に不安定になりやすい時間帯で、夕暮れ症候群とも呼ばれます。
帰宅願望が現れやすい時間帯でもあり、一人で玄関に行こうとされて転倒のリスクが増大するなど、事故のリスクも高い時間です。
【19時~21時】就寝に向けての介助
夜勤者、夜勤リーダー
全利用者の居室誘導と更衣、眠前薬の服用など、就寝前の介助を行う。ナイトケアを行います。
自分でパジャマに着替える方もいらっしゃれば、歯磨きや更衣、トイレなど全てに介助が必要な方もおられます。
個別に対応しつつ全体で就寝が極端に遅れる人が出たりしないよう、注意して介助しなければなりません。
引き続き帰宅願望や不定愁訴で不安定な状態の方も多く、見守りと介助で忙しい時間帯です。
【21時~5時】深夜の見守りや対応
夜勤者
適宜見回りとナースコールへの対応、排泄介助を行う。合間をみて洗濯物を片付ける。夜勤リーダー
上記に加え、全体の休憩の調整、食堂の片付け、朝食の準備、記録の作成などを行う。多くの利用者が入眠され、穏やかな時間帯です。
順次休憩を取りながら、定時巡回やおむつ交換などを行います。
目が覚めてしまった認知症の利用者で、時間や場所が分からない失見当識の状態になることもあり、家に帰ろうとされたり、出勤しようとされるなど、寝起きで足取りが覚束ないこともあり突発的に事故のリスクが増大する時間でもあります。
夜勤リーダーは、利用者がよく眠っている時間などを見つけて翌日の準備を行う必要があり、申し送りの準備も行わなければならないなど穏やかな時間帯の内に行わなければならない業務も多く、休まる暇はありません。
待遇、福利厚生について
給料は正社員で月約25万円程度で、手取りでいうと20万円前後になります。これは、夜勤手当1回あたり5,000円、介護福祉士の資格手当5,000円を含んだ金額です。別で年2回のボーナスがあります。
リーダー職に就いてからは、リーダー手当が5,000円つきました。
残業は人手不足の際に頼まれる形で、常態化しているほどではありませんでした。
リーダーになると頼まれやすく、特に急な病欠などで欠員が出たときは、夜勤からそのまま昼食まで残業したこともあります。
有給は申請すれば月に2~3日まで取得可能です。勤続年数に応じて支給され、特に取りづらい雰囲気もありませんが、まとめて連休を取ろうとすると嫌な顔をされるかも知れません。
研修は月に一回の全体会議の際に合わせて実施で、他には職務に応じて参加を求められました。特にリーダーは年数回、本社での研修に参加する必要があり、給料は出ますが学校の授業のような研修を受ける必要があります。
業務で大変なこと
施設という閉じた世界での勤務が続くので、人間関係が非常に重要になってきます。
特に自分の能力ではどうしようもない排泄や食事に時間がかかった場合、事故が発生した場合など、必ず連携が必要になる場面があります。
そういった場合に、仲が悪い職員が一緒の勤務だとそれだけで気が滅入ります。
体調不良や本人の好みなどで食べれないにも関わらず、「ヘルパーに技術がないから食べてもらえないんだ」と、先輩から理不尽に注意されたこともあり、人間関係に馴染めていないと精神的な負担になりました。
これは介護業界でも施設特有のものでしょう。
人間関係以外だと、シフト制による不規則な勤務が負担になります。特に女性が多い業界で、土日祝日に休みが集中する関係で、勤務は変則的になり、残業も発生します。
転職を考えたこととその理由は?
実は転職を考えており、その理由は人間関係とキャリアプランです。
キャリアプランは施設の方が充実しており、フロアリーダーや主任、施設長と段階的にキャリアアップすることができますが、組織が大きいと、それだけキャリアアップも難しくなり、普段は接することのない本部の人からの評価が必要になります。
その際に必要なのは能力や技術ではなく、本部の人に紹介してもらうことの出来る人脈です。ここで人間関係が重要となってきます。
介護業界は売上と能力が連動しないので、どうしても上司に好かれる人が昇進しやすくなってしまいます。
介護の仕事のやりがいは?
介護業界で働く中で、やりがいを感じることが出来るかどうかはその人の素質次第だと思います。
「ありがとう」という言葉、笑顔はよく引き合いに出されますが、認知症の利用者に叩かれるような場面も少なくありませんでした。
そんなときに疾病の本質を理解して関わることができ、穏やかに過ごしてもらうことができた時に自らの関わりに対して深くやりがいを感じました。
どうしても介護業界全体で重度の方ほど施設に入居しやすいので、叩かれる、怒鳴られるといった場面は多くなります。
相対的にお礼を言われるような機会は減り、ご家族様と会うのは亡くなられたときのようなことも少なくありませんでした。
必要な資格は?
老人ホームは無資格から勤務することができます。
当然、初任者研修などの介護関連資格は持っていたほうが良いですが、必ずしも必要ではありません。
現在では学習機関に通わなければ介護福祉士は取得できないので、もし時間があるなら先に取得しておくほうが有利です。
何より疾病などを深く理解して置かなければ、介護業界で働く上で耐え難い苦痛も多くなってしまうと思います。
未経験でも働ける?
施設型の介護でも、特に有料法人ホームは指定を受けやすく、施設数はとても多くなっています。
有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅が現在の施設介護の中心であると言っても良いかも知れません。
過去中心だった特別養護老人ホームは数が足りない状態です。
そのため、求人は無数に存在します。
面接で大きな問題さえなければ未経験でも働くこと自体は容易だと思います。
どれくらいで仕事に慣れる?
仕事に慣れるまでに必要な期間は自分の介護経験に寄るかと思います。
まずは利用者の名前を覚え、業務の流れを覚え、物品の使用法や介護手技を覚えていく必要があり、一人で満足に業務が出来るようになるのは大体3ヶ月位かかるのではないでしょうか。
対して介護経験がある場合、仕事の内容自体は1ヶ月もあれば覚えられると思います。
しかし経験者として高い期待を持たれることも少なくないので、そんな中で十分に仕事が出来るという意味では、やはり3ヶ月程度かかると思います。
最後に
以上、Bさんからの貴重な現場のお話でした。
介護の仕事といっても、介護業界にもいろんなサービス形態があり、事業所によって特色もあるでしょうが、大変といわれる介護の現場について、少しはイメージが湧いたのではないでしょうか。