今回のテーマは「保険者、都道府県、国の役割分担」です。
- 保険者(市町村等)は介護保険制度の現場運営
- 都道府県は助言と援助で制度を保険者を支える
- 国は制度設計と方向性を示す
以上のような役割分担のもと介護保険制度を運営しています。
過去問でもよく出題されているのでしっかりポイントを押さえましょう。
それでは、それぞれの具体的な役割と事務を順番に確認していきます。
保険者の責務
まず、保険者とは何者かを理解したうえで、特徴や事務内容を確認します。
保険者とは
保険者とは制度の運営主体のことで、「市町村」と「特別区(東京23区)」のことをいいます。
ただし、小規模な保険者では複数の市町村で「広域連合」を設立し、この広域連合を保険者とすることができます。ある程度まとめて事務を行うほうが効率的だからです。
特別会計について
介護保険法第3条では、『市町村及び特別区は、介護保険に関する収入及び支出について、特別会計を設けなければならない』と定められており、介護保険専用の財布である「特別会計」の設置が義務付けられています。
介護の財布(特別会計)と、普通の財布(一般会計)を明確に区分し、財政の健全化のために、介護保険の収入と支出の均衡を保つことがねらいです。
特別会計は過去問でも問われたことがあります。答えは〇ですね。
過去問(第15回出題)[br num="1"]介護保険に関する収入及び支出については、特別会計を設けなければならない。
保険者の主な事務
事務1.被保険者の資格管理
・被保険者証の発行、更新[br num="1"]・被保険者台帳の作成[br num="1"]・住所地特例の管理
事務2.要介護・要支援の認定
・認定調査[br num="1"]・介護認定審査会の設置
事務3.保険給付
・介護報酬の審査支払[br num="1"]・区分支給限度基準額の上乗せ、管理[br num="1"]・種類支給限度基準額の設定[br num="1"]・市町村特別給付の実施[br num="1"]・第三者行為求償事務
種類支給限度基準額:サービス種類ごとに定める利用制限。例えば事業所の数が少ないサービス種類について、特定の人が何回も使うと他の人が使えないので利用制限をかける場合があります。[br num="2"]
第三者行為求償:加害者(第三者)の不当な行為(事故など)により介護が必要となった場合に賠償を求め、給付費を負担させる制度。
事務4.サービス提供事業者などの基準設定や指定
・地域密着型サービス事業者(予防も)、居宅介護支援事業者(※)、介護予防支援事業者に関する基準の設定、指定、指定更新、指導監督[br num="1"]・都道府県知事が介護保険施設などを指定する際の意見提出
(※)居宅介護支援事業者の指定権限は2018年4月より都道府県から市町村へ委譲。
事務5.地域支援事業の実施
・地域支援事業の実施[br num="1"]・地域包括支援センターの設置[br num="1"]・第1号事業などの実施、運営
事務6.市町村介護保険事業計画の策定
事務7.保険料に関する事務
・第1号被保険者の保険料率の決定[br num="1"]・保険料の徴収[br num="1"]・滞納者に対する措置
第1号被保険者の保険料の金額は保険者が決定します。
第2号被保険者の保険料は、国が負担率を定めて、各医療保険者がその負担率分になるよう個々の金額を決定し徴収します。
詳細は保険料の講義で説明します。今は保険者が具体的に決めるのは第1号被保険者の保険料だけと覚えておきましょう。
都道府県の責務
事務1.要介護、要支援認定業務の支援
事務2.財政支援
・地域支援事業に対する財政負担[br num="1"]・財政安定化基金の設置運営
事務3.サービス提供事業者や施設の基準設定や指定
事務4.情報の公表
事務5.介護支援専門員の登録等
事務6.都道府県介護保険事業支援計画の策定
事務7.介護保険審査会の設置
介護保険審査会の設置、運営。介護保険審査会とは保険者が行った介護保険に係る行政処分に対する不服申立て(審査請求)の審理・裁決を行う第三者機関。保険者の処分に納得がいかないときに訴えていく場所です。
国の責務
おわりに
たくさんあって疲れましたよね。ボリュームが多くなったので、ここでいったん区切ります。お疲れ様でした。
今回は保険者、都道府県、国の事務などを中心にお伝えしました。次回の内容は今回の講義と繋がっている部分が多いのでしっかりマスターして次に進みましょう。
次回の講座はこちら>>>【ケアマネ試験講座~第4回】介護保険法から条例への委任