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要介護度の違いとは?不要な区分変更で無駄な費用を払わないために

要介護状態

要介護度について、漠然と高い方がいいと思っている方がいれば、それは危険かもしれません。

「寝たきりだから、病気が重いから、もっと要介護度が高いはず!」ということで、要介護度の見直しを不必要にしてしまうと無駄に費用だけが高くなってしまう場合があるのです。

要介護度の見直しは「するべき人」と「しても意味がない人」がいるので、損をしないためにもよく理解したうえで行いましょう。

この記事では、「要介護度が上がると何が変わるのか」という点を中心にまとめてみました。

要介護度とはどれだけ介護が必要かを表すランク

要介護度とは「介護の手間」を表すランクのことです。

「介護の手間」は1日に必要な介護の時間を基に判断されます。

具体的には、自宅での訪問調査の結果から、1日にどれくらい介護の時間が必要な状態なのかを導き出して、該当する要介護度に割り振られます。

介護度の判定

介護時間から要介護度を区分

25分以上32分未満 ⇒ 要支援1

32分以上50分未満 ⇒ 要支援2

32分以上50分未満 ⇒ 要介護1

50分以上70分未満 ⇒ 要介護2

70分以上90分未満 ⇒ 要介護3

90分以上110分未満 ⇒ 要介護4

110分以上 ⇒ 要介護5

この時間は実際に介護にかかる時間をはかったものではありません。

訪問調査の結果から分かる状態像を統計データに照らし合わせ、「こういう状態の人はだいたいこれくらいの時間がかかるよね」と導き出したモノサシのようなもの。

厚生労働省の判定ルールに基づきコンピュータが算出する目安時間です。

ですので、要介護1の人が1日に50分以上の介護サービスを受けられない訳ではありません。

ちなみに、要支援2と要介護1の時間は同じになっており、認知症状や状態の安定性などを考慮して振り分けられます。

要介護度は介護の手間を表すランクであるということは、たとえ病気であっても身の回りのことが自分でできて介護の手間がかからない人は、要介護度が低くなる場合もあるということです。

要介護度が違うと具体的に何が変わるのか

要介護度を見直すことを区分変更と言います。

基本的に、区分変更をして要介護度が上がるメリットは次の2点

  1. 使えるサービス種類が増える
  2. サービスを使えるが増える

ですので、

「今の要介護度では特養に入れない...」(要介護3以上必要)
「もっとサービスが必要だけど、上限単位いっぱいで増やせない...」

要介護度の区分変更は、こういったときに必要なものです。

例えば、状態が悪化してサービスを増やす必要があっても、今の要介護度の上限単位内に収まるのであれば、区分変更をする意味がないのです。

具体的に要介護度が上がるメリットを見ていきましょう。

区分変更のメリット1 使えるサービス種類が増える

要介護度が低いと使えないサービス種類が一部あります。

特に影響が大きいのは、施設などに入所するサービスについて。

施設入所に及ぼす影響

  • 老健、介護療養施設、介護医療院には要支援1~2では入所できない
  • 特養には要介護3以上でないと原則入所できない
  • グループホームには要支援1では入所できない

そのほか特養の入所待ちをする場合に、要介護度が高い方が入りやすい傾向にあります。

特養は「重度の要介護者を重点的にみる施設」という位置づけにあるので、要介護度が高く在宅での生活が困難な方が入所の優先順位が高くなっているからです。

在宅サービスの場合は、要介護度の違いで使えるサービス種類に劇的な差はありませんが、要支援1~2、要介護1は「介護ベッド」や「認知症徘徊探知機」などの一部福祉用具を原則レンタルできないなどサービスの利用制限が若干あります。

今の要介護度では使いたいサービスが使えないので、区分変更する場合は見直しのメリットがあるでしょう。

区分変更のメリット2 介護サービスの使える量が増える

先に確認したとおり、要介護度とは介護の手間を表したもの。要介護度が上がれば、その分介護サービスを使える上限量が増えていきます。

ただし、使える量が増えたからといって、必要ないサービスを贅沢で受けることはできないので、あくまで日常生活を送る必要最低限の範囲での話になります。

要介護度別のサービスを使える上限量は次のとおり、量を単位という言葉で表します。

要支援1 5,003単位
要支援2 10,473単位
要介護1 16,692単位
要介護2 19,616単位
要介護3 26,931単位
要介護4 30,806単位
要介護5 36,065単位

この上限単位のことを「区分支給限度額」といって、介護保険からお金が給付される一か月あたりの上限を表します。

この上限単位の中であれば、保険が適用されるので1割~3割の自己負担で介護サービスを利用できますが、この上限単位を超えて利用したサービスについては保険給付の対象にならず10割全額の自己負担が必要になるという仕組みです。

例えば、要介護1なら1月に16,692単位分のサービスを保険適用で使うことができますが、それを超えると保険が効きません。

上限を超えてしまう人は区分変更を行い、仮に要介護3になれば26,931単位に上限が上がるので、保険適用できる上限が増えることになります。

これが区分変更のメリットです。

単位とは

ざっくりと、単位=費用と考えていただいて問題ありません。

介護保険のサービスは、どのサービスを、どれくらい利用したかによって、単位数があらかじめ決められています。

例えば、訪問介護(ヘルパーが自宅に来て介護)サービスでは、「30分以上1時間未満」の「身体介護」を提供した場合は1回あたり394単位、「20分以上45分未満」の「生活援助」を提供した場合は1回あたり181単位と決められています。

つまり、訪問介護の場合は、利用時間に応じて単位=費用が決まる仕組みです。

訪問介護の場合は、要介護度が変わっても単位数はかわりません。

用語説明

身体介護

移動、食事、入浴、排せつなど、利用者の身体に直接触れて支援する介護のこと。

生活援助

掃除、洗濯、調理、買い物など利用者の身体に直接触れない家事支援などのこと。

今度はデイサービスの例です。

デイサービス(事業所に通って機能訓練や介護を受ける)を「7時間以上8時間未満」利用した場合、要介護1なら645単位、要介護3なら883単位です。

デイサービスの場合は、利用時間のほか、要介護度が上がることでも単位数が増える仕組みになっています。

区分変更のデメリット

先の例をまとめると次のようになります。

要介護度の影響

訪問介護:「利用時間」のみで単位数が決まる。

デイサービス:「利用時間」と「要介護度」などによって単位数が決まる。

このようにサービス種類によっては、要介護度が高くなることによって単位数が増える=費用が高くなるので注意が必要。

これが要介護度が上がることのデメリットです。

メリットがないのに、区分変更を行い要介護度が上がってしまうと無駄な費用がかかるだけといった結果になりかねません。

メリットとデメリットを理解せずに、単純に身体状況の悪化に合わせて意味もなく区分変更を進めてくるケアマネはさすがにいないと信じたいですが、区分変更を進められた場合はきちんと理由を確認しましょう。

ところで1単位はいくら?

「さっきから単位、単位というけれど一体いくらなんだい?」というしっかり者のあなたへ。

細かい話になりますが、1単位は約10円で、この1単位の金額を「地域単価」と呼んでいます。

「約」といったのは場所によって違うからです。例えば、一番地域単価が高い東京23区の場合、訪問介護を受けるときの地域単価は11.4円。逆に一番低いところは10円です。

この地域単価の差は物価の違いからきています。都市部の物価が高いところほど1単位の金額が高く、物価の低い地方は基本的に単価が安くなります。

計算例

事例15,000単位のサービス利用時の違い

【物価の高い地域】

15,000単位×11.4円(地域単価)=171,000円(総額)

【物価の安い地域】

15,000単位×10円(地域単価)=150,000円(総額)

この総額の1割~3割が自己負担額になります。

区分変更の理由について

要介護度の違いと区分変更のメリット、デメリットを理解したうえで、区分変更が必要だと判断した場合は役所へ区分変更の申請をします。

区分変更の流れは、初めて認定申請をしたときや更新申請のときと同じで、再度自宅での訪問調査が行われることになります。

申請をするときに変更申請の理由を書く必要があるので、なんと書くべきか迷うところですが、「現状ではこういう問題があるので、より高い介護度が必要」という、具体的な問題点を書けば大丈夫です。

例えば、

「状態が悪化し自宅での生活は難しい、施設に入所したいが要介護度が足りない」

「状態が悪化し、サービスを増やしたいが今の要介護度では上限いっぱい」

といった趣旨のことが書かれていれば問題ありません。

もちろん「状態悪化」の部分は具体的に、それは「やむを得ないよね~」と思わせる理由を書きましょう。

要介護度の判定は訪問調査結果をもとに、医者などの有識者の集まりが最終判断をしますが、訪問調査から見えてくる「身心の状態像」と「具体的なやむを得ない理由」が合致すれば、よい結果を得られる可能性が高まるでしょう。

適切な要介護度の認定を受け、必要なサービスを確保しつつも無駄なお金を払うことのないよう気をつけましょう。

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