今回のテーマは「住所地特例」です。
前回講座で介護保険の被保険者になる要件を学びました。
第1号被保険者、第2号被保険者ともに市町村区域内に住所があることが、その市町村の被保険者になる要件でしたが、今回学ぶ住所地特例はその例外です。
住所地特例とは
例えば、A市に住所があればA市が保険者なのでA市の被保険者となります。
引っ越しをして住所をB市に移すと、B市が保険者になるのでB市の被保険者となります。
これが原則。
住所地特例とは、B市に引っ越すときに、住所をB市にある住所地特例の対象施設に移した場合に、保険者を引っ越し前のA市のままにするという制度です。
住所はB市なのに、介護の保険者はA市のままという状態。
なぜこんな制度があるかというと、保険者の財政負担を均一にするためです。
例えば、介護施設が「ほとんどないA市」と「たくさんある近隣のB市」があるとします。
もしA市に住んでいる人が在宅で暮らせなくなった場合、A市に施設は少ないので、B市の施設入所を検討することになるでしょう。
施設の数が多いと、やはり重度の要介護者が集まります。
保険料で介護費用が全てまかなえるなら問題ないですが、介護の財源の半分は税金のため、要介護者が増えると介護財政的には負担が増えることになります。
この保険者間の財政の不公平をなくすために住所地特例という制度が介護保険法に定められています。
住所地特例対象施設
次の7つが住所地特例対象施設です。他市町村のこれらの施設に住所を移しても保険者は変更になりません。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 有料老人ホーム(有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅を含む)
住所地特例者と地域密着型サービスと地域支援事業
住所地特例者は住所地市町村の地域密着型サービスと地域支援事業が使えます。
地域密着型サービスとは「認知症対応型通所介護」や「小規模多機能型居宅介護」などの、地域住民を対象にしたサービスです。
住所地特例の場合、住所地市町村は保険者ではありませんが、住民ではあるので、現地の地域密着型サービスが使えます。
[char no="2" char="マロン"]1.「地域密着特定施設」などの地域密着型サービス提供施設は住所地特例対象施設じゃない。[br num="1"]2.有料老人ホームなどの住所地特例対象施設に入れば、「小規模多機能」などの地域密着型サービスを使える。[br num="1"]この2つを混同しないようにね![/char]
また、要介護状態の予防、悪化を防ぐための地域支援事業も使えます。
ということは、地域支援事業のメニューである、第一号事業(旧予防ヘルプ、デイ)=総合事業も利用することができます。
地域密着型サービスと地域支援事業については、別講座で詳しく解説する予定です。
いまは、住所地特例者は両サービスを使えるということだけ覚えましょう。
住所地特例に該当するか
パターン別に該当するかを確認していきましょう。
各場所は住所がある所を表しています。ここでは住所地特例対象施設のことを「住特施設」と呼びます。
まずは住所地特例に該当するケース。すべて保険者はA市のままです。
2番目のケースは住特施設を転々とするパターンですが、住特施設をいくつ挟もうが保険者はA市のままです。
3番目の適用除外施設のケースは2018年からの扱いです。以前はB市の保険者になるケースでしたが、今は適用除外が間に入ってもA市が保険者のままです。
※すべての適用除外施設が住所地特例の対象ではない。指定障害者支援施設、障害者支援施設、のぞみの園、救護施設のみが対象です。
次に住所地特例に該当しないケース。
住所地特例とは他市の住特施設に住所を移しても保険者が変わらない制度なので両ケース対象になりません。
最初のケースは、身体はB市の住特施設にいますが、住所はB市の個人宅に移しているので保険者はB市になります。例えば、その後C市の住特施設へ住所を移した場合はB市の保険者のままです。
2番目のケースは、そもそも住所を移してないのでA市の保険者のままです。
特別養護老人ホームと養護老人ホームの違い
特別養護老人ホームは、要介護高齢者が入所する施設で目的は介護です。
養護老人ホームは、環境、経済的な理由で入所する施設で目的は自立生活と社会参加です。
ちなみにこれも余談ですが、介護老人福祉施設=特別養護老人ホームと覚えて問題ありません。
特別養護老人ホームとは、もともと介護保険制度が始まる前の高齢者福祉を担っていた「老人福祉法」に根拠を持つ施設。
介護保険法では、「介護老人福祉施設とは老人福祉法に規定されている特別養護老人ホームで・・・」と規定されています。
つまり「老人福祉法に根拠を持つ特別養護老人ホームを介護保険法では介護老人福祉施設と呼んでいる」という認識でOKです。
次回の講座はこちら>>>【ケアマネ試験講座~第8回】要介護・要支援状態と認定の流れ